「飲む点滴」とも呼ばれるほど栄養価の高い甘酒。
美容や健康に良い、と近年注目を集める日本伝統の発酵飲料です。
甘酒には一般的に、糖分やアミノ酸をはじめ、ビタミンB群など種類豊富なビタミン類が含まれており※1、酒粕や米麹を原料とすることで、酵母や麹菌の発酵産物である生理活性物質が豊富に含まれていると考えられています。
特に主原料とする酒粕や米麹は、それぞれ健康機能に関する研究が進められ、その機能成分も明らかになりつつあります。
美容成分についての研究もなされ、美肌効果に期待できる成分が確認されています。
たとえば酒粕や米麹中には、肌の保湿機能に重要な役割を果たすセラミドをはじめ、いくつかの種類のスフィンゴ脂質が含まれていることが報告されており※2、酒粕中にはメラニン合成阻害による美白効果の期待されるチロシナーゼ阻害活性を示す成分が同定されています※3。
実際に甘酒を飲用した場合の美容効果に関してはデータが少なく、今回は酒粕と米麹を含む甘酒を飲用した際の美容効果について検証しました。
試験対象
40~60代の便秘気味で肌荒れが気になる女性17名
甘酒群と対照群の2グループに分かれて試験
試験飲料
■甘酒群:酒粕と米麹を使用した甘酒
■対照群:甘酒群とカロリー等が同じ飲料
(対象者は自身がどちらの群か知らされません)
方法
両群ともに、毎日朝と晩1回ずつ100mlのお湯で溶かして1ヶ月間飲用
測定項目
肌測定、VAS試験(主観的評価)
1ヶ月間の飲用試験期間の後、試験前後での体重測定と肌や見た目の状態に関する主観的評価をVASアンケート法にて実施し、肌の状態(肌の明るさ:L*値、表面温度)について測定しました。
甘酒飲用群は対照群に対し、目の下のクマの明るさに有意な改善が認められました。
甘酒飲用群は各評価項目において、対照群よりも大きくスコアの改善が認められました。
※VAS試験:10cmの左端を最も良い状態、右端を最も悪い状態として、試験前後に被験者の方に現在の状態を表す地点に印をつけてもらい、それが左端から何cmかを測定する方法。数値が小さくなった分だけ、良い状態になったことを示す。
皮膚の表面温度に関しても、対照群では変化が見られなかったのに対し、甘酒飲用群では有意な上昇が見られました。
目の下の明るさ変化について、主観的評価にて改善が見られ(図2)、実際の皮膚の明るさも改善(図1)していることから、実感を伴った効果が認められることが明らかになりました。
目の下のクマ改善には、皮膚の表面温度上昇(図3)も関連していると考えられます。表面温度が上昇して血行が促進され、老廃物の排泄が促されることでクマ改善に寄与したのではないかと推察されます。
表面温度上昇には、アミノ酸等の栄養素摂取による代謝亢進が一因として考えられ、また甘酒に含まれるアルギニンやアデノシンにも血行促進作用があることから※4、これらの成分が血行促進に寄与していると考えられています。(※今回の試験の試験飲料にはアルコール分はほとんど含まれておらず、今回見られた効果はアルコールによるものではないと推察されます)
また、アデノシンには、睡眠・覚醒サイクルを正常化するとの報告があり※5、主観的評価に見られた「朝の目覚めの改善」(図2)の改善には甘酒のこのような成分が寄与しているかもしれません。
今回見られたこれらの効果は、甘酒中の単一の成分だけでなく、様々な成分が複合的に寄与した結果と推察されます。
※1:小泉武夫「発酵は錬金術である」/新潮社 p.71~78(2005)
※2:北垣浩志他「Franrance Journal」/ p.41(12)、21~27(2013)
※3:H.J.Jeon et al.「J.Agric.Food Chem.」/p.54(26)、9827~9833(2006)
※4:F.Costa,I.Biaggione「Hypertension」/p.31(5)、1061~1064(1998)
※5:特表 2006-513214
参考文献
FRAGRANCE J 2016; 44 (6): 43-6.
東京工科大学 前田憲寿教授(医学博士)との共同研究