栄養を吸収してくれる小腸などの腸管は、一方で身体にとって有害な細菌や毒素などは排除しなければいけません。
腸管は粘膜に覆われていて、ムチンとはその粘膜を覆っている粘液の主成分。
腸では主に胚細胞で産出され、細胞を保護し、病原菌や毒素から組織を守る役割を担っています。
ムチンが減ると腸管がむき出しになり、体に悪さをする病原菌などの侵入や定着を防ぎきれずにその影響を受けやすくなってしまいます。
こうして粘液として物理的に腸管を守るムチンの他にも、腸管内には抗体反応として微生物に科学的変化をもたらし、抗菌活性を発揮することで細菌の侵入を抑制する働きを担うlgAという因子も存在します。
このように、大切な腸管を細菌などの敵から守るものをまとめて「腸管バリア」機能とよばれています。
方法
マウスに甘酒主原料の「酒粕+麹」を2:1で配合した餌を4週間摂取
試験飼料※各群n=7
・通常食
・通常食+酒粕と米麹の混合物(糖質10%分を置き換え)
・高脂肪食
・高脂肪食+酒粕と米麹の混合物(糖質10%分を置き換え)
測定
1飼育期間中の糞便中lgAおよびムチン量の測定
2摂取4週間後にムチン関連遺伝子を定量PCR法にて定量
甘酒の主要成分である酒粕と米麹を摂取することで、腸管を守る役割を果たすムチン量の増加と、ムチン関連遺伝子の発現上昇が見られました。
このことから、酒粕と米麹を使った甘酒の摂取により、胃腸の粘膜を保護し病原菌や毒素から守る腸管バリア機能向上の可能性が示されました。
東京大学 阿部啓子特任教授らとの共同研究による、2016年11月開催の第22回日本フードファクター学会学術集会にて発表された内容です。